2019年1月12日土曜日

映画『めぐり逢わせのお弁当』



昨晩
インド映画
DVDで初めて見ました。


正確に言うと、
インド、フランス、ドイツ、
の合作です。

『めぐり逢わせのお弁当』
という
日本語タイトルです。



インド映画っていうと
歌って踊って
CGも使いまくって
ギンギンギラギラの画面で

「ノリノリだぜイェーイ!」
というイメージでしたが、

始終静かにストーリーは進みます。
心温まります。
人生について深く考えさせられます。



私が最近観た映画の中では
👑ダントツ1位👑
です。


【あらすじ】


とうまく行っていない
美しく若い妻

何とか夫婦仲を取り戻そうと
の為に美味しい弁当を
一生懸命作っています。

アパートの上階に住んでいる
”おばさん”と呼ぶ女性に
窓越しで
あれこれ相談しながら作っています。



インドでは
「ダッパーワーラー」
と呼ばれる
作った弁当をオフィスまで届けてくれる
宅配サービスがあるそうで、

若い妻
受け取りに来た宅配の男性に
作った弁当を渡します。

宅配人はバイクの後ろに
無数の弁当をくくりつけて
街中を走りますが、

途中で落ちないか
見ていてハラハラします(・_・;)



場面変わって
オフィスでは
昼休み近くになり

宅配の人が
一人ひとりのデスクに
黙々と弁当を置いていきます。

そのシステムには若干びっくりします。



昼休みになり
定年退職間近の
物静かな初老の男性
弁当のフタを開けると
いつもと様子が違います。

何回も匂いを嗅ぎ
何かを確かめています。

そうです、
宅配人が人を間違えて
弁当を渡してしまったのです。

初老の男性
妻を何年か前に亡くし

本来は
街の弁当屋から
宅配してもらっているのでした。



自宅に帰ってからは
独りで寂しく
レトルトの夕食を食べます。

昼もカレーでしたが、
またカレーです(笑)

そうです
ここはインドなんです。



また場面は変わって
若い妻の家です。

弁当箱は
舐めまわしたように
キレイになって
の許へと帰って来ました。

は喜び
上階の”おばさん”
やはり窓越しに報告します。



夜遅くにが帰宅しますが
の態度は相変わらず冷めていて

一言、
「ブロッコリーがうまかった」
とだけ、弁当に入っていない食材の感想を言います。

そこで
弁当が間違って届いた事に気づきます。

の弁当は
先程の初老の男性に間違って届いていたのです。



翌日、

上階の”おばさん”に”窓越しで”相談して
弁当に短い手紙を入れて
反応を待つ事とします。

案の定
帰ってきた弁当には
初老の男性から
返事の手紙が入っていました。



そこから
若い妻

初老の男性

弁当を通しての
妙な文通が始まります。



それとは別に
初老の男性は定年退職するので

後任の若い男性(少し軽い)に
仕事の引継ぎをします。

一見無口で不愛想な
初老の男性
ペラペラよくしゃべる
若い男性との関係は
始めはぎくしゃくしていますが

若い男性にも
暗く悲しい過去があり、
互いの過去を知った2人の距離は
徐々に縮まっていき、

上司である初老の男性
若い男性
結婚式の後見人になるまでになります。



またそれとは別に
先程の若い妻には
寝たきりの父と
それを看護する母がいて
更には
まだ幼い娘も一人抱えていて
との関係にも悩まされ
始終重荷を背負わされています。

ある日
初老の男性
思いを決して
若い妻と会う約束を
手紙を通して取りつけます。

その後のストーリーは
見てのお楽しみです!


【感想】


全体的に
物悲しい人間模様の中にも

ふとした表情や仕草で
「クスッ」
と笑わせる場面が差し挟まれています。

悲しさも
悲壮感漂う、
という感じではなく
涙がポロリとこぼれるような悲しみです。

俳優の演技が
自然で現実感があり
また魅力的でもあります。

この人の為に何かしてあげたくなってしまいます。



ストーリー上の布石が効果的で
後の展開に確実に効いて行きます。

そのお蔭で
画面に無いこと(いわゆる”行間”)を
想像する事が出来ます。

カット割り
カメラのアングル
暗に状況を説明していて
シンプルで分かり易いです。



あと音楽がほとんどないんです!

音楽が主張しすぎて冷める事がままありますが、
映画って音楽がなくても
これだけ見ている人を惹きつけられるんですね!



作曲家の武満徹
「映画では音楽を足すのではなく削ることを考えている」
といった旨をエッセイに書いているのを
読んだことがありますが、

まさにこの映画がそうです。



映画を通して
インドの現代社会の人間模様を
垣間見る事が出来ました。

日本では希薄になってしまった人間関係を
インドでは今でも大切にしている様に思えました。

ちょうど
昭和初期~中期頃にかけての
日本を見ている様でした。



建前と本音がはっきりしていて

例えば、

母親が娘にお金の無心をするシーンでも
始めは建前上頑なに遠慮しているけど
すぐに
「じゃぁ、5000ルピーほど、、、」
といった母親の変わり身の早さに
気付かぬふりをする娘の優しさや

道端でボール遊びをしている子供を大人が叱ったり、
電車でお年寄りに席を譲ったり、

若い妻が上階の”おばさん”に相談したり、

上司である初老の男性
後任の若い男性の家に食事に誘われて行ったり
結婚式の後見人になったり、

古き良きニッポンを懐かしく見ている様でした。



後任の若い男性が言った

『人は間違った電車に乗っても正しい場所に着く』

という
色んな意味に取れる
哲学的な言葉が
心に残りました。



始終静かに物語は進み、
登場人物の感情が高ぶる場面もなく
ユーモアもありながら
どこか切なくやるせない、、、

差し詰め
”インド版 山田洋二作品”
といったところでしょうか?

もう一度見たい作品です。

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